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更新日: 2020年05月01日

応援メッセージ『コーヒーのチカラで難局を乗り越えよう』

 2020年4月現在、世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が収まらず、コーヒー生産国では収穫作業や輸送のための労働力確保が困難となり、消費国では外出自粛や喫茶店等の休業も相次ぎ、世界のコーヒー消費量が相当な減少リスクを抱えることになると国際コーヒー機関(ICO)などが報じています1)。4月17日に新型コロナウイルスの特別措置法に基づく緊急事態宣言の区域がすべての都道府県に拡大され、非日常の中で日常生活をせざるを得ない今、先が見通せず暗澹としたムードが日本列島を覆い包んでいます。しかし、長いこと薬として扱われ、今では様々な効用が明らかになってきたコーヒーには、人を元気づけ、生活に潤いをもたらすコーヒーのチカラが間違いなくあります。以前、東北大学が企業と行った「コーヒーの香りが人の行動にもたらす効果を調査する実験」では、コーヒーの香りが、嗅いでいる人をよい気分にさせ、その結果、他人に親切な行動を取らせるように働くという興味深い結果も報告されています2)。本学会では、コーヒーには人を動かす、変化をもたらす『コーヒーのチカラ』があると信じ、熊本地震や長野県の台風19号被害などの被災の折に、現地にコーヒーを送り届けたところ、被災者は心身を奮い立たせることに大いに役立てられたと聞きました。この度のウイルス感染拡大状況は、日本全体が被災地になったようなものです。医療関係者は日夜最善を尽くし診療業務に従事され、介護関係者は感染拡大防止に尽力されてます。最前線に立たれている彼らに無償でコーヒードリップバックを提供できれば、疲労回復や心身の落ち着きを取り戻すのに役立てられるのではないかと考えます。送付方法等は、学会各支部よりその地域の公共機関などに届け、それらが現場へ届くようにするなど各支部と会員間での連絡と連携を行うことになりますが、できるところから進められればと思います。会員個人では、「図書文化の普及に貢献するため、好きな本を説明なしで表紙の画像だけ投稿する7日間ブックカバー・チャレンジ」を各Facebookで始めていますが、本と相性が良いコーヒーでも同じようなつながりを工夫できそうです。
 新型コロナウイルス感染症は、食生活の面でも私たちがこれまで経験したことのない状況をもたらしています。多くの飲食店が来店者の激減や予約キャンセルに見舞われ、休業を余儀なくされたとこも多々あります。喫茶店も同様ですが、「ウィルスで沈みがちな気持ちを、喫茶店の珈琲チケットを買って盛り上げよう!」という名古屋でのクラウドファンディングの事例も学会Facebookで情報提供いたしました3)。人と相対しにくい今こそSNSなどを利用したアイデアや行動を共にすることも大変参考になります。また、感染者の中には急に匂いや味がわからなくなったケースがあると聞き、あくまで一つの目安ですがウイルス感染の可能性として、香りの飲み物コーヒーを飲んだ時の風味が従来と全く違うと感じたら注意とも紹介いたしました3)。まずは、私たち自身のウイルスに対する抵抗力を維持、強化する免疫力をつけることが大切ですが、先が見通せない今はどうしてもストレス、疲労、運動不足などで免疫力低下が避け難いでしょう。近年、免疫力を高めるには腸の状態が重要なことが明らかになってきており、コーヒーを1日2杯以上飲んでいた人は、それ以下か全く飲まなかった人に比べ腸内フローラのバランスが優れているという研究報告もあります4)。恐らくコーヒーに含まれるポリフェノールなどの抗酸化物質が関係していると思われ、『コーヒーのチカラ』に期待するところです。
 また、企業でテレワークの導入が進んでいる現在、Zoom、Skype、Line、Wherebyなどさまざまななアプリケーションやプラットフォームを利用して自宅にいながら同僚や友人と繋がって酒を飲み交わすことも増大しています。学会ではお酒だけではなくコーヒーを飲むことも提案したいと思います。近年はライフスタイルの変化で、パソコンの前でランチや休憩時間にコーヒーを飲みながら会話を楽しむ方が精神的リフレッシュや意思疎通につながると考える人も多くいます。スウェーデンの「フィーカ(Fika)」という習慣を例に挙げますと、スウェーデン人は、業務時間内のコーヒー休憩でコミュニケーションを図り、フィーカの習慣が仕事の生産性を高めているそうです。日本では家にいるより職場にいる時間の方が多いのが当たり前のように思われてきたかもしれませんが、感染防止のため家にいる時間が多くなったのなら、それを前向きにとらえて『コーヒーのチカラ』でワークライフバランスを進める意識改革が必要でしょう。
 さらに、神奈川県内の事例を挙げれば、アイデアと行動、SDGs(持続可能な開発目標)の17番目のゴールであるパートナーシップによる取組みがあります5)。例えば、小田原&近隣店で協力した「おだわらテイクアウト大作戦」という各店の自慢メニューを自宅で楽しめるとともに情報共有の場としての活用も検討しています。この活動を通じてSDGsの8番目のゴール「働きがいも経済成長も」と12番目のゴール「つくる責任つかう責任」に寄与しようとしています。また、休校中の小学生と家族向けに、紙袋からマスク入れを作る「オンラインアップサイクルワークショップ」というものもあります。この活動を通じてSDGsの4番目のゴール「質の高い教育をみんなに」と12番目のゴールと13番目のゴール「気候変動に具体的な対策を」に寄与しようとしています。コーヒーのストローがプラスチックごみによる海洋汚染問題の深刻さに気づかせてくれたり、コーヒーのかすや麻袋を利用したアップサイクル(捨てればゴミになるものに新しい価値を与える)の話を聞かれた方もあるかもしれません。これらの点でコーヒーはSDGsと親和性が高く、経済・社会・環境のバランスの大切さにつながる『コーヒーのチカラ』ではないでしょうか。
 最後に、日本コーヒー文化学会では、コーヒー愛好家の皆様から忌憚のないご意見やコメントをお寄せていただき、コーヒーの未来とコーヒー文化をつなげていきたいと考えています。『コーヒーのチカラ』を様々なアイデアと行動につなげて、共にこの難局を乗り越えていきましょう!

(廣瀬幸雄会長、鈴木誉志男副会長、井谷善惠副会長、岡希太郎副会長、後藤裕広報担当)

【参考情報】
1)食品新聞情報 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200416-00010006-shokuhin-bus_all
2)日刊工業新聞情報 https://www.nikkan.co.jp/releases/view/10019
3)学会Facebook https://www.facebook.com/日本コーヒー文化学会-665370336942648/
4)ダイアモンドオンライン情報 https://diamond.jp/articles/-/220060
5)神奈川のSDGsの取組み https://www.pref.kanagawa.jp/docs/bs5/sdgs_partnership.html

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